不動産トラブル事例

不動産を購入する前や購入したのち、不動産会社とのトラブル、工務店とのトラブル、近隣とのトラブルなど、
さまざまな悩みと直面することも少なくありません。
今までに実際におきたトラブルを事例として紹介し、考え方や解釈の仕方などをご紹介いたしております。

どうして!?買った土地の面積が契約書と違っていた場合

会社員Aさんは、マイホームを建てるための土地を、ある不動産屋から数年前に購入しました。

ところが、最近、土地家屋調査士に土地の面積を測ってもらうと、契約書に書かれた土地の面積よりも、実際の面積がいくらか少ないことがわかりました。

契約書に書かれた面積が実際の面積よりも小さかったということは、不動産屋にだまされたということでしょうか?

不動産屋になんらかの適切な措置を講じてもらいたいのですが、どうすればよいのでしょうか?

買った土地の面積が異なっていた場合、それが公簿売買だったか実測売買だったかで対応も違う

不動産売買のよくあるトラブル事例の一つに、土地の面積が契約書に書かれていたものと違う、というケースがあります。

たとえば、契約書では「220㎡」となっているにもかかわらず、実際に測ってみると「200㎡」しかなかったりすることがあります。

220㎡だとだいたい66坪、200㎡ならだいたい60坪になるため、約6坪の違いが出てきます。

畳になおすと約12畳分になります。6畳の和室二部屋分の違いということになります。

66坪と思って買った土地が、ほんとうは60坪しかなかったわけですから、

買主からすればだまされたような気持になるのもやむをえないことだと思います。

しかし、このようなケースは多々あります。

どうしてこのようなことが起るのでしょうか。

それは土地の売買においては、「実測売買」と「公簿売買」という二つの売買形態があり、

どちらによる売買であったかによって土地の面積の表示の仕方も変わるからです。

ですから、まずは、この「実測売買」と「公簿売買」がどのようなものであるのかを知らなければなりません。

 

  • 実測売買と公簿売買とは?

土地の売買契約においては、取引となる土地が「実測売買」になるのか、あるいは「公簿売買」になるのか、

どちらになるのかを契約書あるいは重要事項説明書等に明らかにするようになっています。

また、両者の違いについて、不動産屋などの仲介業者は買主に十分に説明する義務を負います。

それでも、不動産業者のなかには、説明があいまいだったり、不十分だったりして、それが後々、トラブルの原因となることがあります。

「説明の義務がある」と言いましたが、どのような説明をするかの具体的な決まりはなく、不動産業者にまかせられているからです。

このことがトラブルの要因となっています。

公簿売買について、じっくり時間をかけて細かい説明をしてくれる業者もいる一方で、

「登記簿に記されている、その土地の表示面積にもとづいて売買することです」とごくごく簡単に説明をすませてしまう業者もいます。

売主や買主の立場に立てばどちらの業者が親切かはともかく、いずれの場合も公簿売買について説明はしているため、

とりあえずは「説明の義務」はしたことになります。

そして、実測売買や公簿売買の二種類の売買方法について買主がよく知らないことも、

不動産業者の説明不足とあいまってトラブルとなっている場合もあります。

たとえば、公簿売買について、「登記簿に記されている、その土地の表示面積にもとづいて売買することです」と業者が説明した場合、

たしかにそれは嘘ではありませんが、その説明を聞いている側が不動産登記についてよく知らず、

登記簿に記されている面積がそのまま、その土地の実際の面積だと思っている場合、間違いのもとになる可能性があります。

登記簿に記された土地の面積と実際の面積は違っている場合もあるからです。

 

  • 公簿売買では、原則として差額請求はできない

公簿売買によって土地を売買した場合、あとからその土地の面積が登記簿上のものと実際の面積と間に違いがあることがわかったとしても、

売買代金は変更や増減を請求できません。

公簿売買は、一坪いくら、とか、1㎡いくら、といった単価をもとに売買するのではなく、

土地そのものがいくらといった価格がついての売買だからです。

このため、公簿売買は、「売買代金固定型」とよばれることもあります。

公簿売買は法律に則った土地売買の方法のため、あとから実際の面積と違っていることがわかって、

売買金額の変更を求めて裁判をしたとしても、おそらく認められない可能性が高いです。

 

  • 公簿売買の利点とは?

公簿売買の利点といえば、測量にともなう時間や費用、労力がかからないことにあります。

土地の面積を測るだけなら、それほどむずかしくはないだろう、と考えている方もいらっしゃいますが、

土地の面積を求めるためにはまず境界を明確にしなければならないことから、その土地がどのような境界を持っているか等で、

意外と費用と手間暇のかかることなのです。

たとえ同じ面積であっても、その土地の形状や隣接する土地の所有者などによって、測量費はかなりかわります。

測量費がどのくらいかかるかを一概にいうのはむずかしいのですが、面積の求めやすい形状をした100㎡あたりの費用がだいたい

安くても30万~40万、複雑な事情を抱えた土地になると、同じ面積でも100万を超える場合もあります。

もちろん、面積が大きくなるにしたがってかかる費用は大きくなります。

田舎などの、土地が広くて安いところでは、この実測費用の方が土地の売買代金よりかかる場合もあります。

このようなケースですと、実測はせず公簿売買による取引を行うこともあるのです。

 

  • 実測売買について

では、もう一方の実測売買とは何でしょうか?

実測売買とは、前もって土地の㎡単価あるいは坪単価を定めて、実際の測量結果に基づいて売買価格を決める契約をいいます。

公簿売買と違って、実測した土地の面積によって価格が変わるので、「土地売買代金清算型」とよばれることもあります。

実測売買における契約は、測量の前に契約するのが一般的です。

契約のあと、実際に測量を行い、土地の面積が確定すると、それをもとに売買代金の清算をします。

 

  • 実測売買における注意事項

買おうとする土地の面積をしっかり測量するのだから、実測売買のほうがいいじゃないかと思うかもしれません。

しかし、実際には実測売買よりも公簿売買が選択されています。それはなぜでしょうか?

実測売買は、その名の通り、土地の面積の実測があって初めて成り立つものですから、

測量するための費用を出すのは誰か、という問題があります。

ところが、売主と買主のどちらがその費用を負担するかについての決まりはありません。

双方話し合いのうえで決めることもできるのですが、一般的には売主の負担となることが多いものの、

売り主には負担したくないと思う人もいて、もめる原因になります。

測量費用を出したくないと考える売主のなかには、測量にかかわる費用や手間暇をなくしたいために公簿売買を勧めることもありますし、

公簿売買で買ってくれる買主がいればそっちに売りたいという場合もあります。

その土地を買いたい買主からすれば、公簿売買で買った土地が、あとから境界の件でもめることになったりする可能性もゼロではないため、

やはり測量はしてほしいと思うのではないでしょうか。

買主の方で実測売買をのぞんでも、売主側が測量費の負担を拒む場合、双方が半分ずつ負担するという方向でできないものかを

仲介業者を通して持ち掛けてみるのも一つの手です。

 

  • 実測売買の利点

事実上の土地の面積をもとに売買が行われる実測売買は、

売買後のトラブル回避という点で公簿売買に比べて売主・買主双方にとってメリットがあるといえるでしょう。

土地の面積をはっきりさせるだけでなく、隣接する土地との境界に問題があればそれを知る機会にもなります。

金銭的に余裕のあるかぎり、いくらかの費用はかかっても、実測売買を吟味するのは有益です。

様々なメリットとデメリットを天秤にかけたとき、決して損のない実測売買ですが、

わたしの個人的な経験から申しますと、日本における個人間の土地売買の約8割以上が公簿売買です。

この数字が意味するのは、かならずしも実測売買が公簿売買に劣ることを意味しているわけではありません。

この割合のなかには、すでにその土地が実測された過去をもっていたり、登記簿の面積が実測した面積と同じであるため、

実測売買をする必要がなかったという場合も含まれていたり、

あるいは、多くの人がさしあたっての面倒を避けて、公簿売買を選択している現状もあらわしているといえるからです。

 

  • 公簿売買におけるトラブルの事例

測量におけるトラブルはないにこしたことはありませんが、残念ながらがら実測売買も公簿売買もそれは起こりえます。

しかし、難しい問題へと発展しやすいのは公簿売買のほうだといえます。

たとえば質問者Aさんと同じような、次のような事例がありました。

登記簿では土地の面積が250㎡と記されていたのに、家を建てるために工務店が現地測量をしたところ、実際には230㎡だった、というケースです。

買主は、自分の買った土地に建てる予定の家の外観や間取りについて、工務店と話をほぼ進めていたところでした。

土地の面積が250㎡だと考えていた買主は、当然、それをもとに部屋の広さや配置の計画をたてていました。

しかし、実際の土地の面積は250㎡でなく230㎡だったため、計画通りに家を建てた場合、建ぺい率の問題が発生することがわかったのです。

買主が家を建てようとしている土地は、都市計画法の用途地域では「第一種低層住居専用地域」にあたり、建ぺい率の上限値は60%でした。

つまり、買った土地が250㎡であれば、建築面積は最大150㎡まで建てることが可能だったのですが、

230㎡しかなかったため、建てられるのは138㎡までです。

12㎡ほどの差があり、坪になおすと、約3.6坪、畳だと約7枚分の違いになります。

つまり、和室で一部屋6畳分減らしてもまだ足りない差になるのです。

すでに出来上がっている設計から、約3.6坪分(約7畳分)の面積を減らすのは極めて難しいことです。

たとえば、もしもダイニングキッチンをゆったり広めの15帖にしたいと計画していたとしても、8帖に変更する必要に迫られるわけです。

(注:部屋の広さをあらわすのに「帖」や「畳」を使うことありますが、和室の場合「畳」、

フローリングなどをほどこした洋室の場合「帖」の字を使うことが多いようです)

土地面積がわずか11㎡ほど違うだけでマイホームの設計図はかわってしまうことを思うと、

買主の立場にたてば納得できないものがあるにちがいありません。

 

  • トラブルをどう回避するか?

売買契約後の土地の面積を巡るトラブルを未然に防ぐための注意点として二つのことを上げたいと思います。

・「公簿売買」とは何かをわかりやすく丁寧に説明してくれる業者を選ぶこと。

・実測売買による契約をすること。

仮に、その時の事情等で公簿売買を選択せざるを得ない場合でも、

公簿売買についてわかりやすく丁寧な説明を契約時にしてくれる仲介業者を選ぶ必要があります。

その業者が誠実な説明をしてくれているかどうかの判断には、いろいろこちらから質問をしてみるのもいいかもしれません。

こちらがすでに知っていることでも、知らないことにして、尋ねてみるのです。

そのとき、業者がどんな説明をするかで、業者の対応が誠実なものかどうかの判断の目安になります。

いま、「どんな説明をするか」といいましたが、「どんな説明をしなかったか」という点も大事です。

たとえば、公簿売買について、「登記簿に記されている、その土地の表示面積にもとづいて売買することです」と業者が説明した場合、

それはたしかに公簿売買について説明したかもしれませんが、説明していない面もあるからです。

それは、「登記簿における土地の面積は、実際の面積と違うことがある」という点です。

この説明がないと、登記簿に記された土地の面積は実際の面積と同じだと思っている人がその土地を買い、

あとから違った場合、トラブルになりかねません。

このように、「何を言っていないか」に注意するのは大事なことです。

しかし、多少の費用と手間暇がかかったとしても、できることなら公簿売買ではなく実測売買を選択するのが賢明です。

実測売買の場合、測量費や、測量にともなう境界の確定のために、

隣接する土地の所有者の立ち合いが必要になったりと、いろいろ面倒な手続きがありますが、

それでも後から起こるかもしれないトラブルとそれに伴う無用な心配を少なくする確実な方法だと思います。

実測によって確定測量図を作っておけば、土地の面積のことであとから思い悩むこともないでしょう。