不動産登記法の改正案

親などが亡くなり遺産の相続先が決まると、相続人は名義を変更します。不動産は法務局で変更します。このことを「相続登記」といいます。相続登記は現在、法的義務がなく申請期限もありません。その為、価値を生まない土地などは登録免許税や司法書士への報酬といった登記費用を負担したくないとして登記を怠ったり、売却したり貸したりできない不動産は相続先が決まらないまま放置されることが多いため、今回の法改正では「土地の相続登記を義務化」「遺産分割協議に期間制限を設ける」「土地所有権の放棄制度」「土地に特化した財産管理制度」が改正案に盛り込まれます。

【土地相続登記の義務化】

登録申請を義務化し、行わなかった場合は過料など罰則を設けます。

【遺産分割協議の期限を設定】

遺産分割協議に期間の制限がないことも、所有者の確定を遅らせている原因の一つです。話し合いでの合意や家庭裁判所への調停申し立てがされずに被相続人が亡くなって一定期間が過ぎれば、法定相続割合で権利を確定させます。期間は3年・5年・10年の複数案があります。期限内に相続人が決まらない場合は、法律に従って自動で相続先が決まります。

【土地所有権の放棄制度】

現在は土地の所有放棄は認められていません。遠方の土地を相続せざるを得ない場合でも放棄することが可能になります。対象は権利関係に争いがないなど一定の条件を満たす土地に限られます。放棄された土地は国が所有し、固定資産税を上回る管理料を相続人が負担する見通しです。

【土地に特化した財産管理制度】

複数の土地を所有している場合、土地ごとに相続財産管理人を選べるようにする。管理人は相続人がいないかどうかを調べた上で、土地をもらうべき人に分けたり、売却して債務の支払いに充てたりします。相続人の調査機関を最短3ヶ月~5ヶ月に短縮、費用負担も減らす見通しです。

政府が改正案を提出するのは、所有者不明土地問題が深刻化しているからです。「所有者不明土地問題研究会」の推計によると2040年には720万ヘクタールが所有者不明の土地になる予想です。所有者を探す費用や公共事業の遅れなどの経済損失額は約6兆円に上ると言われています。その為、早急な対応が求められています。