NEWS Release

2020.05.15賃貸民法改正で借り手の負担軽減へ

2020年4月から民法(債権法)の改正法案が施行されました。民法の改正は賃貸借契約にも影響があるためオーナーにとっては大きな問題です。

国民生活センターの発表によると、全国消費生活情報ネットワークに寄せられる敷金・原状回復トラブルに関する相談件数は毎年約1万3000件もあります。しかし、民法には敷金や原状回復についての基本的なルールを定めた規定がありませんでした。賃貸借契約を含む債権関係の規定は1896年(明治29年)以降ほとんど改正されていませんでしたが、今回の改正で「賃貸借に関するルール」が文明化されました。

■ 敷金に関するルールの文明化

敷金については、賃貸借が終了して賃貸物の返還を受けた時に、貸主は賃料などの債務の未払い分を差し引いた残額を返還しなければならない。【敷金額-未払い債務残額(損害賠償金・未払の賃料・原状回復費用等)=返還額】

■ 原状回復に関するルールの文明化

賃貸借の借主は、通常損耗(賃貸物の通常の使用収益によって生じた損耗)や経年劣化については原状回復する必要はありません。通常の損耗とは、家具の設置よる床の凹み、壁紙の日焼けなど。これらは過失や故意によるものではないので責任を負う必要はありません。しかし、引越し作業やペットによる柱などに生じたキズやタバコのヤニ汚れは原状回復義務の対象になります。

■ 賃貸不動産が譲渡された場合のルール

賃貸借契約が継続している状態で建物の所有者が代わった場合の家賃請求に関する規定はありませんでしたが、改定後は原則として新たな所有者が賃貸人になります。新賃貸人が家賃を受け取るには、不動産移転登記が必要となりますので、譲渡を受けたら早めに移転登記をしましょう。

■ 修繕についての義務

賃貸人の修繕義務と賃借人の修繕義務の範囲が明確化されました。賃貸人が物件を貸す際は、しっかり修繕をして入居者が使える状態にすること。そして、入居者の過失・故意により故障・不具合が発生した時は入居者が自分の判断で修繕をしてもいいということが記載されました。通常、備え付けのエアコンが故障した際はオーナーに修理依頼をします。しかし、修理に時間がかかりトラブルになるケースもあります。建物・設備はオーナーの物ですから勝手に修理することはできません。改定後は、入居者が修繕の必要を通知したにかかわらず、必要な修繕をしない時や急な事情があるときには、自分で修理を頼み後からオーナーに請求することができるようになりました。

■ 連帯保証人の責任範囲と限度額

個人(法人は含まれない)が保証人になる場合の保証人の保護を進めるため、極度額の定めのない個人の根保証契約は無効となります。さらに、連帯保証人の限度額を契約書に記載するように定められました。

賃貸人・賃借人双方にとってプラスになるよう、改正内容をしっかり把握しておくことが必要です。