金利上昇時代を生き抜く:2025年日本の不動産投資、成功への鍵は「二極化」の理解にあり
2025.08.31

2025年 日本不動産市場の「二極化」:金利、円安、そして政策が描く未来
2025年、日本の不動産市場は歴史的な転換点に立っています。長らく続いた超低金利時代が終わりを告げ、円安が進行する中で、海外からの資本流入が加速。そして、社会構造の変化に対応するための新たな政策が打ち出されています。この複合的な要因が絡み合う中、市場は一様なトレンドではなく、セクター別、地域別で明確な「二極化」の様相を呈しています。
金融政策の転換と住宅市場のダイナミクス
2025年初頭、日本銀行はマイナス金利政策を解除し、金融政策の正常化に舵を切りました 。これにより、市中銀行の変動金利型住宅ローン金利は、2025年4月時点で0.15~0.35%上昇するなど、住宅購入者への直接的な影響が生じています。ローン返済負担の増加から、購入を控える動きが一部で見られる可能性も指摘されています。
しかし、市場全体が冷え込んでいるわけではありません。都心部の不動産は、この金利上昇局面でも堅調さを維持しています 。この背景には、金利上昇の直接的な影響を受けにくい富裕層や機関投資家による旺盛な需要があります 。
特に首都圏の中古マンション市場は記録的な高騰を続けており、東京23区と横浜市・川崎市では2017年1月以降の最高額を更新しました。2025年3月には、東京23区の中古マンションの平均価格が1億4,939万円に達するなど、一般のサラリーマンが手が届きにくい水準となっています。成約件数は前年同月比で31.0%も増加し、一方で在庫件数は13カ月連続で減少しており、需要が供給を大幅に上回るタイトな需給関係がうかがえます。
この価格高騰の顕著な要因の一つが、海外投資家の存在です。円安の進行により、日本の不動産は海外の投資家にとって相対的に安価な魅力的な資産となっています 。また、日本の安定した社会情勢や、海外主要都市と比較して高い利回りも投資意欲を後押ししています 。この状況に対し、国土交通省は都内のマンションを対象に、外国人による所有割合の実態調査を開始しました。これは、経済的利益をもたらす海外資本と、国内の住宅市場の健全性維持という政策的なジレンマを象徴する動きです。
商業用不動産:回復と課題
オフィス市場は、都心回帰の動きが再び活発化しています。リモートワークとオフィス出社のハイブリッド勤務が定着する中で、企業は優秀な人材を確保するために、都心一等地へのオフィス移転や増床ニーズを高めています 。2025年には都心オフィスビルの大規模供給が見込まれますが、多くのビルでテナントがすでに決定済みであり、空室率の急上昇懸念は限定的です 。企業収益の好調さも追い風となり、賃料は引き続き上昇傾向にあります 。
インバウンド需要の回復も、ホテル市場に顕著な活況をもたらしています。訪日客数が過去最高を更新する見込みで、ホテル需要増加への期待は引き続き大きく 、海外投資家によるホテル開発や取得も活発化しています 。
一方、建設コストの高騰は不動産市場における継続的なリスク要因です。円安や原材料高を主因として、建築工事コストはコロナ禍前と比較して約20%増加しており 、これが新規開発プロジェクトの収益性を圧迫する可能性があります。特に物流施設市場では、需要は高いものの、建築コスト高騰が新規供給を抑制している状況がうかがえます。




地域に光を当てる:川崎市の再開発事例
再開発プロジェクトは、地域の価値を向上させる強力な要因ですが、計画の遅延リスクも顕在化しています。川崎市では、JR川崎駅隣接地の「川崎新!アリーナシティ・プロジェクト」や、富士通テクノロジーパークの再開発など、複数の大型プロジェクトが進行中です。
しかし、「川崎新!アリーナシティ・プロジェクト」は、当初2028年10月を予定していた開業時期を2030年10月以降に延期すると発表されました [15]。これは一部設計の見直しが主な要因とされています。この事例は、大規模プロジェクトに内在する潜在的なリスクが現実のものとなる可能性を示唆しており、事業判断においてこうしたリスクを詳細に評価することの重要性を改めて認識させます。
2025年度税制改正のインパクトと課題
2025年度税制改正は、不動産市場にいくつかの重要な影響を与える項目を含んでいます。特に注目されるのは、子育て世帯等に対する住宅ローン減税の借入限度額の上乗せ措置の1年間延長です。これにより、物価高騰の影響を受けやすい子育て世帯の住宅取得が引き続き支援されます。また、マンションの長寿命化を促すための固定資産税減額措置や、マンションの建て替え・再生を円滑化するための減税制度も創設される見込みです。
一方で、これらの優遇措置が依然として新築住宅に限定的であるなど、人口減少・空き家増加に対応するために求められる「中古シフト」を本格的に促すには至っていないという課題も指摘されています。政策が長期的な社会課題に対して、まだ一貫した方向性を持てていない現状を浮き彫りにしています。

まとめ
2025年の日本不動産市場は、一様なトレンドではなく、セクター別・地域別の二極化がより鮮明になる転換期にあります。この複雑な状況下で成功を収めるには、金利上昇や建設コストといったマクロなリスクを精密に分析し、賃料上昇余地のある高付加価値物件を選定する戦略的なアプローチが不可欠です。この転換期を乗り越え、持続的な成長を実現するためには、市場を深く理解し、機動的に対応する洞察力が鍵となるでしょう。