高齢者の多くは、いつまでも住み慣れた自宅での生活継続を望んでいます。(自宅での住居継続希望65%)しかし、高齢者の住まいは断熱やバリアフリーが不十分で広さのある住宅が多いため維持管理も大変です。そこで、国土交通省は初めて「高齢期の健康で快適な暮らしのための住まいの改修ガイドライン」を策定しました。
高齢期に住み慣れた家で快適に暮らすための住宅改修
高齢期を快適に過ごすためには、可能な限り早い段階で高齢期の住まいや住まい方を選択することが重要で、その中でも住まいの改修は有効な手段の一つです。
≪高齢者の住まいの状況≫
・多くの方は持ち家にすんでおり、古い住宅はバリアフリーや断熱性が低いことが多い。
・高齢期の生活ではヒートショック・けが・病気を防ぐために住まいの環境が重要です。
・子育て期に建てた家は広く、単身・夫婦の高齢者にとって維持管理が負担になる。
・気力・体力・金銭面で余裕のある早い段階で住まい方を選択する必要がある。
住宅ストック約5,000万戸のうち約39%が無断熱の状態です。65歳以上の高齢者の家庭内事故11,879人のうち約46%が溺死この中にはヒートショック(家の中の急激な温度差により血圧が大きく変動することで失神や心筋梗塞・脳梗塞などを引き起こす)などの疾患も要因です。
≪目指す住まいのイメージ≫
・長く健康に暮らせる住まい。安全・安心・身体的・経済的な負担が少なく外出や家事に便利であること。
・自立して自分らしく暮らせる住まい。外出・趣味・交流などライフスタイルに応じた空間を確保する。
・介護期になっても暮らせる住まい。手すりの設置や福祉用具の使用などの対応で暮らし続けられること。
・次世代に継承できる良質な住まい。長寿命化に対応し子供や孫にとっても住みやすいこと。
≪改修方法の例≫
- 温熱環境
居室の開口部・非居室の開口部の断熱化・冷暖房設備の設置と間取りの工夫
外壁・屋根・天井・床の断熱化 等
- 外出のしやすさ
玄関から道路までの段差の解消、手すり・照明の設置
玄関スペースの確保、上り框近くに建手すりやベンチ設置
縁側などにデッキ・スロープの設置 等
- トイレ・浴室の利用しやすさ
夜間でもトイレまで行きやすい環境
トイレ・浴室内のバリアフリー環境
トイレ・浴室に冷暖房設備の設置 等
- 日常生活空間の合理化
日常的な生活空間を同じ階にする
引き戸への変更・間仕切り壁の撤去など生活空間の一体化 等
- 主要動線上のバリアフリー
日常生活で家事・外出・トイレなどによく利用する動線のバリアフリー化
転倒時の衝撃に配慮した床仕上げ
コンセント位置の変更 等
- 設備の導入・更新
安全で使いやすい設備を導入又は更新する
見守り機器や緊急通報システムの導入
座って使える調理台・洗面台の導入 等
- 光・音・臭い・湿度等
日照・採光・遮音・風通しなど適切な室内環境を確保する
吸音・遮音・調湿・防臭などの機能のある内装材への変更 等
- 余剰空間の活用
余った部屋を納戸・収納庫として活用する
縁側やテラスなど半屋外空間の設備を行う 等
早い段階で住まいの備えをすることで、快適な暮らしをすることが可能になります。