不動産トラブル事例

不動産を購入する前や購入したのち、不動産会社とのトラブル、工務店とのトラブル、近隣とのトラブルなど、
さまざまな悩みと直面することも少なくありません。
今までに実際におきたトラブルを事例として紹介し、考え方や解釈の仕方などをご紹介いたしております。

築1年程度のコンクリート擁壁にひび割れが。シリコンを詰める補修で大丈夫?

一昨年前、高低差が1.3mある土地の建売住宅を購入しました。新築であったにもかかわらず、道路に面したコンクリートの擁壁10か所にひびが生じています。売主に相談したところ、「シリコンを詰めて補修をする」と言われました。原因を追求したり、コンクリート強度を調査するのが先だと思うのですが。きちんと対応してもらえるのか、とても不安です。

高低差のある土地では、地盤調査が義務づけられています。

築年数が浅いのに擁壁にひびが10か所も入るということは、地盤が弱い可能性があります。擁壁は、傾斜地の土砂が崩れないよう施す構造物で、道路や建物を守るのが目的です。高低差のある土地に建物を建造する場合、土壌を切り取ったり盛り土をして水平にならします。盛り土の地盤は脆弱になることが多く、したがって地盤の強度を調査することが法的に義務づけられているのです。

建築基準法で地盤調査を実施することが義務づけられたのは2000年6月ですので、それ以降に販売された物件には「地盤調査書」があるはずです。また2009年10月以降に引き渡された一般住宅では、法律上「住宅瑕疵担保責任保険」に加入していなければなりません。

売主がそのような法律に則って契約を履行していたのか、まず確認してみましょう。実施されていないのであれば違法ということになりますので、あらためて調査することを要請する権利はあります。戸建て住宅の地盤調査は、「スウェーデン式サウンディング試験」という手法が主流となっています。調査にかかる費用は、一戸あたり10万円前後が相場となっています。

土地・建物の購入を検討する際には、あらかじめ立地条件にひそむリスクについて考えることが大切です。建物の外見や眺望の良さ、利便性は物件のメリットとして魅力的です。しかし表面的な要素だけでなく、その土地本来の風土や地域性などにも目を向ける必要があります。今回のような高低差のある土地もそうですが、山を切り開いた開発地なのか、地盤は強固なのか、住宅の位置は山側あるいは谷側なのか、住宅のすぐ裏に山がないか、河川より低い位置ではないかなどで、背負うリスクは変わってきます。住宅をとりまく根本的な環境と性質を知っておくべきでしょう。たとえば土砂崩れなどの災害が起きやすい地域でないか、埋め立てによる地盤沈下が生じていないか、土壌の性質、または過去の災害記録や防災ハザード・マップなどで調べるのも良いでしょう。

建築・土木に関する法律はさまざまな基準を設けており、安全性を確保するために数年おきに見直し、改定施行されます。中古物件ですと、補修などをして現在の安全基準に適合しているかどうかは確認しましょう。不動産の購入に際しては専門家に相談し、関係する法律の予備知識があると心強いといえます。また契約書に印鑑を押す前に、どのようなことが書かれてあるのか必ず目を通すことが肝心です。